「笈の小文」の旅シンクロニティ――香を探る梅に蔵見る軒端哉 芭蕉
本日 2016年 1月12日
貞享4年12月10日
はグレゴリオ暦で
1688年 1月12日
或人興行
香を探る梅に蔵(くら)見る軒端哉
此間、美濃大垣、岐阜のすきものとぶらひ來りて、歌仙或るは一折(ひとをり)など度度(たびたび)に及ぶ。
「笈の小文」より。名古屋防川(ぼうせん)亭で興行とされるが、この人物は不詳で連句も現存しない。サイト「俳諧」の「笈の小文」によれば、日付不詳乍ら、12月10日から12日の内とするので、中をとって本日に配した。
「笈日記」には、
防川(ばうせん)亭
香を探る梅に家みる軒端哉
で載る。
「この間」は前の「蓬左(ほうさ)の人人に迎へとられて、暫く休足(きうそく)するほど」以下の本句までの名古屋永の滞在時間を指す。
「一折」は半歌仙と同じ。歌仙が三十六句一巻懐紙二枚で二折(ふたおり)とするのに対して、その半分である十八句を懐紙一枚で一折(ひとおり)に書く。
防川は相応の構えの商家であろう。そこに梅の香に誘われて導かれきたった、と洒落た挨拶句である。
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