日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第二十六章 鷹狩その他 (14) 日本の門
日本の門は弱そうに見えるのも多いが、殆ど全部絵画的である。だが、破損したのや、修繕の行き届かぬのを見ることは、稀である。それ等は決して塗って無く、縦の柱は太くて丈夫だが、軽くて薄い板で出来ている。奇妙な、ねじれた小枝の出ている変った形の古い板材を、最も繊細な網代や、美しいすかし彫のある羽目の枠組として使用する。時として、縦に割った竹が、ある種の羽目の中心を形づくる。これ等の構造に魅力を附加するのは、これ等の強いものと軽いもの、荒々しいものと繊細な物との対照である。都会では垣根、壁等に、鄙(ひな)びた効果が見られる。
[やぶちゃん注:以下にモースの“Japanese Homes and Their
Surroundings”(一八八五年刊)の第五章の「門口(かどぐち)とエントランス」の「門口」の図七点を二〇〇二年八坂書房刊の斎藤正二・藤本周一訳「日本人の住まい」から示しておく。図246・247は「都市の邸宅の門口」、図248は「東京近郊にある門口」、図249は「門口」、図250は「田舎の住居の門口」、図251は「田舎風の門口」というキャプションが附されてある(原本から私が訳した)。
図246
図247
図248
図249
図250
図251
本文の「縦の柱は太くて丈夫だが、軽くて薄い板で出来ている」は、例えばこの引用した図の246・249・250及び248の前面中央部分で判り、「奇妙な、ねじれた小枝の出ている変った形の古い板材」というのは図248の左右の柱の節部分や249の冠木(かぶき:図ではアーチ状の部分)辺りから類出来、「最も繊細な網代や、美しいすかし彫のある羽目」は図246・247・249で判る。「縦に割った竹が、ある種の羽目の中心を形づくる」は、垣根ながらも図248・251で連想出来るし、「強いものと軽いもの、荒々しいものと繊細な物との対照」は図249の両側の葦垣とその冠木の驚くべき原木との組み合わせ方、図250の冠木(というか棟)の飾り(これは棟に何本も渡した竹の横木とその下の鞍状の樹皮を棕櫚繩で縛って屋根本体の固定させ、その繩の縛り目を捩って羽飾り風に棟上に突き上げた独特の「繊細な」手法である)などから読み取れるものと思う。]
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