山本松谷「鎌倉江島名所圖會」挿絵第四
[やぶちゃん注:明治三〇(一八九七)年八月二十五日発行の雑誌『風俗畫報』臨時増刊「鎌倉江島名所圖會」(第百四十七号)の挿絵四枚目。
右上に「妙本寺本堂の圖」
その下にL字型に入って「鷲峯山覺園寺の圖」
その下に「本覺寺側面の圖」
と手書き文字でキャプションが記されてある。この内、「本覺寺側面の圖」には張り込みで「本堂」と「仁王門」とあり、これから、現在の若宮大路の鎌倉郵便局右手の路地を入って小町小路に出る北側から見た図であることが判る。画面右は田圃と思われるが、左手のそれは明らかに蘆の類いが生い茂り、手前には沢瀉(おもだか:単子葉植物綱オモダカ目オモダカ科オモダカ属オモダカ Sagittaria trifolia)と思しい水生植物を見られることから、ここに小町小路の東の滑川から入り込んだ沼池にようになっていたのかも知れない。ここの右の端にも子守りの少女が描かれており、何かを曳いているが、タッチが粗過ぎて何かは分からない。やはり亀だろうか? なお、「鷲峯山覺園寺の圖」覚園寺の薬師三尊図像の方は正直、似ていない。似ていないだけでなく、同寺の中尊薬師如来は腹の前方で両手を組む法界定印で、掌上に薬壺を持つはずなのに、それが描かれていないこと、さらに同寺の右脇侍(向かって左)の月光菩薩は頭頂部が有意に高く突き出ていなければならないのにそうなっていないこと、三尊の前、本尊正面に法界定印を組んだ別な仏像があることなど、かなり不審である。両側に十二神将像の一部を描き込んではあるので全くの想像ではないとは思うものの、正直、しょぼ臭いと言わざるを得ない。]
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