日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第二十六章 鷹狩その他 (9)ヒキサワ(?)他
元旦には以前の人力車夫の辰が、子供をつれ、蜜柑の大きな籠をおみやげに持ってやって来た。我々に忠実であった召使いの切愛心をよくあらわしている。翌日は前に使っていた料理番の吉が、羊羹(砂糖と豆とで出来た菓子)を一箱持ってやって来て、私に新年を祝った。二人とも私の家族がどうしているかをたずね、エディスやジョンの名前を覚えていた。料理番は、現在ある日本の料理屋で、いい位置にいるといった。
[やぶちゃん注:「エディス」モースの長女であるイーディス・オウエン・モース(Edith Owen Morse 一八六四年~一九六二年)。この当時(元日なので前年の明治一五(一八八二)年で計算。次も同じ)、十八歳。
「ジョン」モースの長男である ジョン・グールド・モース(John Gould Morse 一八七〇年~一九五一年)。この当時、十二歳。]
図―755
図755はヒキサワと称する巧妙な道具で、真鍮か銀かで出来ており、製図用のペンを持たぬ日本の図工が、筆で直線を引くのに使用する。筆を定規上によこたわる、Aから末端Bに至る溝にあてがい上端Cは平たくなっている。これで彼等は予備の線を引くのであるが、極めてこまかい線でも引くことができる。
[やぶちゃん注:「ヒキサワ」不詳。識者の御教授を乞う。]
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