山本松谷「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」挿絵 江の島お岩屋(龍窟)の図
山本松谷「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」挿絵 江の島お岩屋(龍窟)の図(見開き)
[やぶちゃん注:明治三一(一八九八)年八月二十日発行の雑誌『風俗畫報』臨時増刊「江島・鵠沼・逗子・金澤名所圖會」(第百七十一号)の挿絵の二枚目。上部欄外中央に「江の嶋龍窟の圖」とキャプションがある。私のスキャン機器の関係上、上部を数ミリ、右手を大きく二・九センチメートルほどカットしてある。岩肌を強く示すためにコントラスト補正をしてある(左手の海の字透けは消えたが、逆に右手上部のそれが出てしまった。悪しからず)。
右手上部の峰がぐっと下がったところが、江の島が縊れる切れっ戸の部分(中村屋本店と中村屋羊羹店が向かい合わせにあって裏道が合流する箇所)である。左手端には俎板岩で行われていた素潜りの鮑獲りの様子もちゃんと描き込んである。何より、画面左手奥(稚児が淵の石灯籠も見える)からまさに龍のようにお岩屋(龍窟)へと続く木道の棧道が強烈で、また、松と岩肌と波の砕ける描き込み方が、これまた、神がかっており、あたかも動画を見ているかのように「風」と「波浪」を感じる。これは少なくとも舟を漕ぎ出して実見しなくては描けないものである。江の島を描いた隠れた佳品の一つと私は思っている。]
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