「笈の小文」の旅シンクロニティ――旅寢して見しや浮世の煤はらひ 芭蕉
本日 2016年 1月15日
貞享4年12月13日
はグレゴリオ暦で
1688年 1月15日
師走十日餘り名護屋を出でて、舊里(ふるさと)に入らんとす。
旅寢して見しや浮世の煤(すす)はらひ
「笈の小文」より。諸本には、初五を、
旅をして見しや浮世の煤(すす)はらひ
とする句形も散見される。
前文があってこの句となる順列からは、あたかも永逗留となった名古屋を出て、郷里伊賀上野へ向かう途次の旅籠か何かでの羈旅吟のように見えるが、これは諸資料から見て、荷兮亭での名古屋最後の逗留の日までに詠まれた句であることが判明している。十二月十三日附杉山杉風宛書簡の末尾に記すものが残る。「煤払い」自体が十二月十三日の年中行事とされていたから、この日の嘱目吟とすることに申し分はない。