日本その日その日 E.S.モース(石川欣一訳) 第二十六章 鷹狩その他 (22) 雪富士
図―762
最近富士は素晴しい外見を呈している。ここしばらく非常に寒く強い風が吹いていた。富士は麓まで雪で覆われ、ここ二晩、山の背後に沈む夕日は、山腹から雲のように吹き上げられる雪を照した。最も輝かしい黄金の辺を持ち、濃い薔薇色の後光との間に、影絵のように立つ濃鼠色の富士は、著しくも美しい景色であった。富士は東京から直線距離的四十マイルで、私は毎日、大学へ人力車を走らせる途中、その驚く可き景色を楽しむが、毎日、富士は変化する光線、影、雪の効果等で美しくある。図762の上は、富士と夕日に照らされる雪を示し、下は朝日に照らされ、雲の影のあるところを示す。先日の朝、富士は雲の影で黒く見え、影にならぬ場所はギラギラと白く輝いていた。
[やぶちゃん注:「四十マイル」六十四・三七キロメートル。これは過小表現。本郷からの実測では直線で百一キロメートルある。この数値で一致するのは東京都町田市の神奈川県との境である。]
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