「笈の小文」の旅シンクロニティ―― 春たちてまだ九日の野山哉 芭蕉
本日 2016年 2月10日
貞享5年 1月 9日
はグレゴリオ暦で
1688年 2月10日
初春
春たちてまだ九日の野山哉
「笈の小文」より。伊賀蕉門の重鎮で藤堂藩藩士の小川風麦(ふうばく ?~元禄一三(一七〇〇)年:本名は小川政任(「まさとう」か))亭に招かれた際の挨拶句。
「芭蕉翁真蹟拾遺」(大蟲編・成立年次不詳)に、
春たちてやゝ九日の野山哉
とする。
山本健吉氏は『この年の立春は四日だから、これは一月十三日と解する人もあるが、「春立て」は立春に限らず、元日でもありうる。するとこの句は一月九日になる。その方が「まだ九日の」表現として自然である。「算用をよく合せたる句」(去来抄)を芭蕉が作るはずがない。土芳の『全伝』には、「二日にも」の句に』「此句正月九日、風麥ニ會シテノ吟也」『と付記しているので、風麦亭の会が九日だったことが分る』とある。私は凡そそんな算盤評者がいるとは思わなかったが、異型の中七の「やゝ」も、これまたますます元旦からとしか思われぬ。
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