譚海 卷之一 薩州唐人村峽竹桃の事
薩州唐人村峽竹桃の事
○薩摩南海の地に唐人村とて一村有。先年漂着の華人夏に土着し、子孫繁殖し一村と成(なり)たるとぞ。今五百人計り有(あり)といへり。又薩州には峽竹桃(けふちくたう)の大樹あり、馬場の並木にありと云。南天竹などいふ皆(みな)垣にあむ事也とぞ。
[やぶちゃん注:底本では標題及び本文中の「峽竹桃」の「峽」の字の右に『(夾)』と訂正注する。
「峽竹桃」リンドウ目キョウチクトウ科キョウチクトウ亜科 Nerieae 連キョウチクトウ属セイヨウキョウチクトウ亜種キョウチクトウ Nerium oleander var. indicum。インド原産で、日本へは中国を経て、江戸中期に伝来したとされる。
「唐人村」現在の鹿児島県鹿児島市内の唐湊(とそ)か。ウィキの「唐湊」によれば、『町名の由来は唐の船が付いた湊であったという説や、唐人が住んでいたという説がある』と記す。
「南天竹」キンポウゲ目メギ科ナンテン亜科ナンテン属ナンテン Nandina domestica の漢名。中国原産で、日本では西日本・四国・九州に自生しているが、古くに渡来した栽培種が野生化したものだとされている、とウィキの「ナンテン」にある。]