近咏 五句 原民喜
[やぶちゃん注:大正一五(一九二六)年十一月発行の生原稿を綴った回覧雑誌『四五人会雑誌』二号に掲載。
底本は一九七八年青土社刊「定本 原民喜全集 Ⅱ」を用いたが、戦前の作品なので恣意的に正字化した。
なお、これらの句は民喜の「杞憂句集」には載らない。最後の句は同句集の昭和一〇(一九三五)年の一句「霧の中にぽつかりと浮き街はあり」の類型句には見える。]
近咏 杞憂亭
うち晴れてコスモスの花の賑へり
飛行機のよく飛ぶ日なり菊畑
道すがら柿赤々と熟れてけり
小鳥來て食はむや窓邊のうめもどき
[やぶちゃん注:「うめもどき」バラ亜綱モチノキ目モチノキ科モチノキ属ウメモドキ(梅擬)Ilex
serrata 或いは近縁種又は同属の仲間。ウィキの「ウメモドキ」によれば、『モチノキ属には多数の種があり』、『日本には以下の近縁種などが分布している』として、イヌウメモドキ Ilex serrata f. argutidens(葉に毛がないもの)・フウリンウメモドキ Ilex geniculata・オクノフウリンウメモドキ Ilex geniculata var. glabra・ミヤマウメモドキ Ilex
nipponica の四種を挙げてある。]
霧明り眩しき街に出にけり

