句会 (七句) 原民喜
[やぶちゃん注:大正一五(一九二六)年十一月発行の生原稿を綴った回覧雑誌『四五人会雑誌』二号に掲載された樂只庵記とある「十月二十五日 杞憂亭宅句會」(記載から同日午後七時開会で十時散会とある)から原民喜の句のみをピックアップした。記者である樂只庵(「らくしあん」と読もう)は山本健吉の俳号の一つ。同句会は彼ら二人と無字庵(熊平武二)三人によっている。題は「葉鷄頭」。
底本は一九七八年青土社刊「定本 原民喜全集 Ⅱ」を用いたが、戦前の作品なので恣意的に正字化した。これらの内には、頭に当日の三人の得点が表示されてある。それは句の下方に〔 〕で示した。因みに最初の句の八点は最高得点である。
二句目に「父行きて」とあるが、原民喜の父原恒吉はこの十一年も前の大正六年二月(民喜満十一の春)に胃癌のために死去しており、事実に即すとしても、季も全く合わないことを注しておく。この場の他の二人のどちらかの心境を句で代弁したものかも知れない。
なお、これらの句は民喜の「杞憂句集」には載らない。]
雨傘(かさ)一つ乾かしてあり葉鷄頭〔八點〕
父行きて葉鷄頭の秋となりにけり 〔七點〕
白雲の下に明き葉鷄頭 〔六點〕
葉鷄頭に月明き夜や厨裏 〔五點〕
[やぶちゃん注:大正一五(一九二六)年十一月発行の生原稿を綴った回覧雑誌『四五人会雑誌』二号に掲載された樂只庵(山本健吉)記とある「四五人會俳句例會」から原民喜の句のみをピックアップした。同句会は原民喜と先に示した句会の二人(山本と熊平武二)に加え、長光太の四人によっている。十月二十九日(前の句会の四日後)の午後二時に熊平のところで開会、題は「冬木立」「火鉢」。
底本は一九七八年青土社刊「定本 原民喜全集 Ⅲ」を用いたが、戦前の作品なので恣意的に正字化した。「電燈」の「燈」は底本の用字。これらの内には、頭に当日の四人の得点が表示されてある。それは句の下方に〔 〕で示した。因みに最初の句の十点は最高得点である。
なお、これらの句は民喜の「杞憂句集」には載らない。]
冬木立
雲と空を映せる水や冬木立 〔十點〕
杉垣の道をまがれば冬木立 〔八點〕
火鉢
電燈(でんき)つきて夜の火鉢となりにけり
〔六點〕

