飯田蛇笏 山響集 昭和十四(一九三九)年 木食僧 /昭和十四年~了
木食僧
僧こもる菩薩嶺の雪また新た
雲水に大鷲まへる雪日和
宋淵法師白皚々たる大菩薩嶺を下り來る
雲水の跫音もなく土凍てぬ
[やぶちゃん注:「宋淵法師」臨済僧中川宋淵(なかがわそうえん 明治四〇(一九〇七)年~昭和五九(一九八四)年)。東大大学院在籍中の昭和六(一九三一)年に山梨県塩山にある向嶽寺の勝部敬学老師に就いて得度、昭和八年三月より木食生活に入る。この頃、蛇笏を訪ねてその門下となっている。後に三島の龍澤寺に入った。海外での禅普及にも努めた。五十鈴氏のサイト「小さなうつわのメッセージ」のこちらに詳しい。
「白皚々」「はくがいがい」と読む。如何にも明るく白いさま。あくまで白いさま。]
暮雪ふむ僧長杖をさきだてぬ
嚴冬の僧餉をとりて齒をみせず
木食す僧嚴冬をたのしめり
雲水の寒風呂いたくたしなみぬ
僧の前籠に淸淨と冬蔬菜
相携へて故紫明の忌へ參ぜんと
忌へ連れて雲水飄と寒日和
[やぶちゃん注:「紫明」不詳。この号を持つ俳人は複数いる。]
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