和漢三才圖會卷第五十二 蟲部 竹蜂
竹蜂
チヨツ フヲン
本綱竹蜂野竹上結窠紺色大如雞子長寸許有蔕窠
有蜜甘倍常蜜
一種黒蜂大如指頭能穴竹木而居腹中有蜜小兒撲殺
取食亦此類也
*
たけばち 留師〔(りうし)〕
竹蜂
チヨツ フヲン
「本綱」に、竹蜂、野竹の上に窠を結ぶ。紺色、大いさ、雞子〔(けいし)〕のごとく、長さ、寸許〔(ばか)〕り。蔕〔(へた)〕、有り、窠、有り、蜜、甘きこと、常の蜜に倍す。
一種、黒蜂、大いさ指の頭のごとく、能く竹木に穴して居す。腹中に蜜有り。小兒、撲殺して取りて食ふ。亦、此の類なり。
[やぶちゃん注:中文サイトをなどを検索すると、本種は現在、ミツバチ科クマバチ属タケバチ(竹蜂) Xylocopa dissimilis に同定されていることが判明した。実は本邦にも既に同属亜種であるクマバチ属Biluna 亜属亜種タイワンタケクマバチ Xylocopa (Biluna) tranquebarorum tranquebarorum が侵入している。ウィキの「タイワンタケクマバチ」によれば、『中国南部からインド、台湾に幅広く分布する』が、本邦では二〇〇六年に、『豊田市で本種の侵入が初めて報告され、愛知県と岐阜県に定着が広がっている』とあり、体長は約三センチメートルで、『雌は頭部、胸部、腹部いずれも黒い。翅は褐色』。『竹林や農地に生息する。本種を含む亜属 Biluna は、枯竹に営巣する』とあるから、これも掲げておくに若くはなかろう。タイワンタケクマバチの侵入顛末記(及び彼らの属するクマバチ類の詳しい生態も載るので必読!)は「中日新聞」公式サイト内の環境ネット国立環境研究所主席研究員五箇公一(ごかこういち)氏の「いろんないきものの話」にある「中国からやってきたクマバチ」が最適である。
・「雞子」鶏卵。
・「寸許り」凡そ三センチメートル。
・「腹中に蜜有り」前にも述べたが、ハナバチであるクマバチ類はミツバチのような大きな集団営巣(各個が一定距離を守った小群営巣はある。以下、引用を参照)はしないが集蜜はするのでこの描写(子供が叩き殺して、その腹の中の蜜を食うというちょっと残酷なシーン。昆虫苦手の私だがこれはクマンバチが可哀想な気がする。それほどには実は珍しく彼らが私は好きであることも言い添えておく。……私はげんげ畑が好き。……そこに寝転んで蜜を吸うミツバチやクマンバチと一緒にいると、何故か、不思議に怖くない。……しかし……げんげ畑も、もう、永く見てないなぁ……)は強ち、誤りではない。ウィキの「クマバチ」によれば、『初夏、メスが太い枯れ枝や木造家屋の垂木などに細長い巣穴を掘り(穿孔営巣性)、中に蜜と花粉を集める。蜜と花粉の団子を幼虫』一匹分ずつ『まるめて産卵し、間仕切りをするため、一つの巣穴に、一列に複数の個室が並ぶ(英名の
carpenter bee(大工蜂)は、この一連の巣づくりの様子に由来)。その夏のうちに羽化する子どもはまだ性的に未成熟な亜成虫と呼ばれ、しばらく巣に残って親から花粉などを貰う。またこのとき、亜成虫が巣の入り口に陣取って天敵の侵入が若干だが防がれる。こうした、成虫の姿での母子の同居は、通常の単独性のハナバチには見られない行動であり、亜社会性と呼ばれる。これはまたミツバチやマルハナバチなどにみられる高度な社会性(真社会性)につながる社会性への中間段階を示すものとも考えられる。また、巣の周囲での他のハチへの激しい排斥行動は行わないため、同じ枯れ木に複数が集まって営巣することもある』とある。]