一つの星に 原民喜 (自筆原稿復元版)
[やぶちゃん注: 広島市立中央図書館の「原民喜の世界」の「画像ギャラリー」の自筆原稿を視認した。原稿用紙は左下欄外に『京大北門前 臼井書房編輯室』とある、二〇×二〇=四〇〇字詰。標題と署名は四行目に二字下げ書かれて、三行空けて本文がある。この本文は極めて特異で、全体が標題と同じく二字下げで、しかも全行が下三字空けで書かれてある。これは確信犯の執筆法と読めるので、ひょうだいの字配も含め、総てそのままに再現した。
一九七八年青土社刊「原民喜全集 Ⅱ」の書誌によれば、昭和二三(一九四八)年七月号『高原』に十五篇から成る「画集」という詩篇群に初出するが、後に著者自身によってこの「一つの星に」を掉尾とした九篇を「美しき死の岸に」の作品群に分類していたため、現行では初出形態で読むことが出来なくなっている数奇な運命の詩群と言える。私の新字体の既電子化「一つの星に」及び私の古い仕儀である「原民喜全詩集」 も参照されたい。
現行通行の詩篇と比べると、改行の問題を無視すると、以下のような異同がある。
・最初の一文中の「見うしなつて、暗がりの部屋に」に挟まれてある読点は、現行のものには、ない。
・「どうしてお前はそれを感じとつたのか」は、現行のものでは「どうしてお前は感じとつたのか」と「それを」が除去されている。
・最終部の、
「さながら靈魂のやうに滑りおちて來て憩らつてゐた稀れなる星よ。」
は、現行では、
「あたかも小さな霊魂のごとく滑りおりて憩らつてゐた、稀れなる星よ。」
と大きく有意に改稿されてある。]
一つの星に 原 民喜
わたしが望みを見うしなつて、
暗がりの部屋に橫たはつてゐる
とき、どうしてお前はそれを感
じとつたのか。この窓のすき間
に、さながら靈魂のやうに滑り
おちて來て憩らつてゐた稀れな
る星よ。
[やぶちゃん注:以下、読み難いとされる諸君のために、連続させたものも示しておく。
*
一つの星に 原 民喜
わたしが望みを見うしなつて、暗がりの部屋に橫たはつてゐるとき、どうしてお前はそれを感じとつたのか。この窓のすき間に、さながら靈魂のやうに滑りおちて來て憩らつてゐた稀れなる星よ。
*]
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