ガリヴァの歌 原民喜
ガリヴァの歌
必死で逃げてゆくガリヴァにとつて
巨大な雲は眞紅に灼けただれ
その雲の裂け目より
屍体はパラパラと轉がり墜つ
轟然と憫然と宇宙は沈默す
されど後より後より追まくつてくる
ヤーフどもの哄笑と脅迫の爪
いかなればかくも生の恥辱に耐へて
生きながらへん と叫ばんとすれど
その聲は馬のいななきとなりて悶絶す
[やぶちゃん注:私が私の「原民喜全詩集」で底本とした一九七八年青土社刊「原民喜全集 Ⅲ」では総標題「魔のひととき」の五篇目に配されてある。同書書誌によれば、初出は原民喜自死から四ヶ月後に出た昭和二六(一九五一)年細川書店刊「原民喜詩集」である。私のポリシーにより正字化して示した。但し、現在進行中の私の「ガリヴァー旅行記」の原稿復元作業【2017年12月11日追記:本カテゴリ「原民喜」で、昨日、全電子化注を終了した。】では彼は旧字の「聲」を「声」と書く傾向は窺える。「憫然」は「あわれむべきさま」の意。本詩篇は「魔のひととき」詩群の順列から見ても戦後の創作であり、本篇のイメージには原子爆弾の惨状のイメージが意識的確信犯としてダブらせてあると考えてよい。]
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