芥川龍之介「侏儒の言葉」(やぶちゃん合成完全版 附やぶちゃん注釈) 庸才
庸才
庸才の作品は大作にもせよ、必ず窓のない部屋に似てゐる。人生の展望は少しも利かない。
[やぶちゃん注:大正一三(一九二四)年十月号『文藝春秋』巻頭に、前の「火星」「Blanqui の夢」、後の「機智」(二章)の全五章で初出する。「庸才」は「ようさい」平凡な才能の持ち主、大した才能を持たない人物、凡才のことである。「凡庸」の「庸」であって、「庸」には並・普通・ありふれた・変わった点を持たないの謂いがある。実は「中庸」というのはそれをフラットな「偏っていない」の意で用いた語なのである。「自由意志と宿命と」の注で言った通り、私はこの漢字を見ただけで虫唾が走るほど嫌悪感を覚えるクチである。芥川龍之介が「庸才」とした作家は誰だろう? その「作品」は何だろう? 「窓のない部屋に似て」「人生の展望」が「少しも利かない」「作品」を書く奴とは? あいつかな? あいつの「あれ」か?!……などと想像してみるだけでもすこぶる楽しくなってくるのを私は常としている。]
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