ヴアカンス 立原道造
ヴアカンス
森の中の小學校。浮雲が、空をすぎて行く、口笛を吹きながら、何かものを考へながら。
小學校の庭に、ぶらんこの下に、空つぽのかげが。日まはりが咲いてゐる、ちやうど黃蜂やもんしろてふの日時計のやうに。
ふと、大きなもののかげり。おしろいの花が散る。
……それ程の短いひととき。
たのしいことがすぎて行く、浮雲のやうに、みなはればれと。
[やぶちゃん注:「黃蜂」「きばち」は、恐らくは膜翅(ハチ)目細腰(ハチ)亜目ミツバチ上科ミツバチ科マルハナバチ亜科(ミツバチ亜科とする説もある)マルハナバチ族マルハナバチ属 Bombus のマルハナバチ類の仲間で黄色の筋模様の強い種を指すものと思われる。]