天の籠 立原道造
天の籠
田舍娘は 汽車に乘つて
隣の町まで買ひ物に行く
大きな籠を手に持つて
――歸り……その籠は
果物・麺麭(パン)・花で いつぱいになり
娘は そのにほひに埋れて
ほんの短い居眠りをする
いつもすつかりおんなじだつた
やがて暗くなりはじめる頃
自分の家で籠はまた空つぽ――
なぜだか知らない
田舍娘は 竃の下に
火を焚きながら
今度は自分のためにだけ
小鳥や眞珠や花でいつぱいな
買物籠の唄をうたふ
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天の籠
田舍娘は 汽車に乘つて
隣の町まで買ひ物に行く
大きな籠を手に持つて
――歸り……その籠は
果物・麺麭(パン)・花で いつぱいになり
娘は そのにほひに埋れて
ほんの短い居眠りをする
いつもすつかりおんなじだつた
やがて暗くなりはじめる頃
自分の家で籠はまた空つぽ――
なぜだか知らない
田舍娘は 竃の下に
火を焚きながら
今度は自分のためにだけ
小鳥や眞珠や花でいつぱいな
買物籠の唄をうたふ