灼ける熱情となつて 立原道造
灼ける熱情となつて
灼ける熱情となつて
自分をきたへよ
ためらつて 夕ぐれに
靑い水のほとりにたたずむな
白く光る雲を 風に吹かれる空を
ちひさく飛んでゆく鳥の道を ながめて
自分のなげかひを 語りかけようと
ねがふな!
ほとばしれ
千人の胸へ
しつかりと摑む胸へ
愛と 正しいものとの
よつて來るところのものと
きづくものとを 確かに知れ
[やぶちゃん注:底本の「後期草稿詩篇」より。「摑む」の「摑」の用字は底本のママ。
・「なげかひ」は名詞「嘆」(なげかひ(なげかい))で、溜息をつくこと・歎き・嘆息の謂い。近代以降の用語と思われる。]