それが どういふことか――夜の歌 立原道造
それが どういふことか
夜の歌
それが どういふことか
僕は とうに 知つてゐるのだ
おろかしいこととも あるひは
ひどいこととも しかし それを
僕は ふせがうとはしない
窓の外で 風が 雨をかきみだす
その叫びが 僕の内からのやうに
僕に 語りかける――あれは いま
歩きなやんでゐる
倒れかかるやうに 光のとぼしい道を
歩きなやんでゐると
ここはしつかだ 花やいだ
燈の下には紫の花が咲いてゐる
[やぶちゃん注:底本の「後期草稿詩篇」より。]