この闇のなかで 立原道造
この闇のなかで
この闇のなかで 私に
うたへ と呼びかけるもの
この闇のなかで だれが
うたへ と呼びかけるのか
時はしづかだ 私らの
ちひさいささやきに耐へぬほど
時はみちてゐる 私らの
ひとつの聲で 溢れ出るほど
とほい涯のやうに闇が
私らを拒んでゐる つめたく
身體は 彫像のやうだ
しかし すでに この闇の底に
信じられない光が 信じられる
私らの聲を それは 待つてゐる!
[やぶちゃん注:底本の「後期草稿詩篇」より。]
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この闇のなかで
この闇のなかで 私に
うたへ と呼びかけるもの
この闇のなかで だれが
うたへ と呼びかけるのか
時はしづかだ 私らの
ちひさいささやきに耐へぬほど
時はみちてゐる 私らの
ひとつの聲で 溢れ出るほど
とほい涯のやうに闇が
私らを拒んでゐる つめたく
身體は 彫像のやうだ
しかし すでに この闇の底に
信じられない光が 信じられる
私らの聲を それは 待つてゐる!
[やぶちゃん注:底本の「後期草稿詩篇」より。]