巣立ち――堀辰雄氏に 立原道造
巣立ち
――堀辰雄氏に
誰と私は似てゐるのだらう
そしてそれは何の知らせだらう
私はいつかよく知つてゐた そのことを
だがもし思ひ出すならば……
私は持つことの出來ただけの不幸を
そのかはりに かがやきとあの平和を
そして あかりの消える夜の一ときに
しづかにあれに捧げよう あれを立ち去らう
もう私はすつかりひとりだ
私みづから私は風に濡れてゐる
[やぶちゃん注:すでに述べた底本の「エチユード」より。]
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巣立ち
――堀辰雄氏に
誰と私は似てゐるのだらう
そしてそれは何の知らせだらう
私はいつかよく知つてゐた そのことを
だがもし思ひ出すならば……
私は持つことの出來ただけの不幸を
そのかはりに かがやきとあの平和を
そして あかりの消える夜の一ときに
しづかにあれに捧げよう あれを立ち去らう
もう私はすつかりひとりだ
私みづから私は風に濡れてゐる
[やぶちゃん注:すでに述べた底本の「エチユード」より。]