芥川龍之介「侏儒の言葉」(やぶちゃん合成完全版 附やぶちゃん注釈) わたし
わたし
わたしは度たび譃をついた。が、文字にする時は兎に角、わたしの口ずから話した譃はいづれも拙劣を極めたものだつた。
[やぶちゃん注:「わたしは度たび譃をついた。が、」「わたしの口ずから話した譃はいづれも拙劣を極めたものだつた」というのは本当である。日記や書簡等を読み込んでみると、火遊びをしている龍之介が、弟子たちや作家仲間に、しきりに妻を誤魔化すための算段を尽くしたり、依頼したりするさまが見てとれるのであるが、そのザマは私のような愚鈍な人間にも見え見えの、まっこと、拙劣な噓であることがバレバレなのである。しかし実はこのアフォリズムの問題は、「文字にする時は兎に角」というところにこそ、ある。我々が読んで感動する芥川龍之介の小説にこそ、彼の仕組んだ、未だ知られぬ巧妙な噓が無数に鏤められているということなのである。]
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