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2016/06/13

日曜日 (全)   立原道造

[やぶちゃん注:一九八八年岩波文庫刊「立原道造詩集」(杉浦明平編)の「未刊詩集」の「日曜日」に拠り、恣意的に正字化した。底本の杉浦氏の解説によれば、原本は手書きで昭和七(一九三二)年から翌年の、第一高等学校時代(満十七から十九歳)にかけて詠まれた詩篇で、『発行所人魚書房と記して、友人に贈ったもの』とある。]

 

 

日曜日

 

 

  風が‥‥

 

《郵便局で 日が暮れる

《果物屋の店で 燈がともる

 

風が時間を知らせて步く 方々に

 

 

 

  唄

 

裸の小鳥と月あかり

郵便切手とうろこ雲

引出しの中にかたつむり

影の上にはふうりんさう

 

太陽と彼の帆前船

黑ん坊と彼の洋燈(ランプ)

昔の繪の中に薔薇の花

 

僕は ひとりで

夜が ひろがる

 

 

 

  春

 

街道の外れで

僕の村と

隣の村と

世間話をしてゐる

《もうぢき鷄が鳴くでせう

《これからねむい季節です

 

その上に

晝の月が煙を吐いてゐる

 

 

 

  日記

 

季節のなかで

太陽が 僕を染めかへる

ちやうど健康さうに見えるまで

 

……雨の日

埃だらけの本から

僕は言葉をさがし出す――

黑つぐみ 紫陽花(あじさゐ) 墜落

ダイヤの女王(クヰーン)……

 

(僕は僕の言葉を見つけない!)

 

夜が下手にうたつてきかせた

眠られないと 僕はいつも

夜汽車に乘つてゐると思ひだす

 

[やぶちゃん注:「黑つぐみ」鳥綱スズメ目ツグミ科ツグミ属クロツグミ Turdus cardis鳴き声はで。]

 

 

 

  旅行

 

この小さな驛で 鐵道の柵のまはりに

 夕方がゐる 着いて僕はたそがれる

 だらう

 

……路の上にしづかな煙のにほひ

 

僕の一步がそれをつきやぶる 森が見

 える 畑に人がゐる

この村では鴉(からす)が鳴いてゐる

 

やがて僕は疲れた僕を固い平な黑い寢

 床に眠らせるだらう 洋燈(ランプ)の明りに

 すぎた今日を思ひながら

 

[やぶちゃん注:字配は底本に従った「洋燈」の「ランプ」はルビであるので、本来の下インデントは同じである。]

 

 

 

  田園詩

 

小徑が、林のなかを行つたり來たりしてゐる、

落葉を踏みながら、暮れやすい一日を。

 

 

 

  僕は

 

僕は 背が高い 頭の上にすぐ空がある

そのせゐか 夕方が早い!

 

 

 

  曆

 

貧乏な天使が 小鳥に變裝する

枝に來て それはうたふ

わざとたのしい唄を

すると庭がだまされて小さい薔薇の花をつける

 

名前のかげで曆は時々ずるをする

けれど 人はそれを信用する

 

 

 

  愛情

 

郵便切手を しやれたものに考へだす

 

 

 

   帽子

 

學校の帽子をかぶつた僕と黑いソフトをかぶ

つた友だちが步いてゐると、それを見たもう

一人の友だちが後になつてあのときかぶつて

ゐたソフトは君に似あふといひだす。僕はソ

フトなんかかぶつてゐなかつたのに、何度い

つても、あのとき黑いソフトをかぶつてゐた

といふ。

 

[やぶちゃん注:字配は底本のママ。]

 

 

  跋(ばつ)‥‥

 

      チユウリツプは咲いたが

      彼女は笑つてゐない

      風俗のをかしみ

      《花笑ふ》と

      僕は紙に書きつける

             ……畢(をはり)

 

[やぶちゃん注:字配とポイント落ちは底本とほぼ同じ(ブログ表示の不具合を考えて本文全体を上げてはある)。]

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