もし鳥だつたら 立原道造
もし鳥だつたら
もし鳥だつたなら、ギリシヤの柱のてつぺんで、朝日の歌をうたはう。橄欖(オリーブ)に包まれた神殿に隅まで明るい朝日、そのなかで、死ぬまで心をはりつめて。
もし鳥だつたなら、そのとき靑空に落ちて行くだらう。言葉にだけたよつてそんな一生の終りにさへ自分は近くゐるのだと、考へられるから。さうして鳥の形した雲になり、またあたらしい歌をうたはう。
もし鳥だつたなら。ああ、日毎に千の歌をかへてうたはう。朝日の歌を。朝日は翼を磨いてゐる、もう僕は後悔の鳥でない。ギリシヤの柱に、きらきらする歌をうたはう。
[やぶちゃん注:すでに述べた底本の「エチユード」より。]

