眞面目な時 Ernste Stunde (Rainer Maria Rilke) 立原道造譯
[やぶちゃん注:立原道造訳になるオーストリアのドイツ語詩人ライナー・マリア・リルケ(Rainer Maria Rilke 一八七五年~一九二六年)の詩集“Das Buch der Bilder”(「形象詩集」一九〇二年/一九〇六年)の中の“Ernste Stunde”。
昭和一〇(一九三五)年十一月号『未成年』第三号に訳載された。
底本(書誌も含む)は二〇〇八年岩波文庫刊「立原道造・堀辰雄翻訳集」を用いたが、私のポリシーに則り、漢字を恣意的に正字化し、題の後に原作者・原題・訳者名をオリジナルに附した。]
眞面目な時
Ernste
Stunde (Rainer Maria Rilke)立原道造譯
今どこかで世界のなかで泣く人は
理由もなく世界のなかで泣いてゐる人は
あれは私のことを泣いてゐる
今どこかで世界のなかで笑ふ人は
理由もなく世界のなかで笑つてゐる人は
あれは私のことを笑つてゐる
今どこかで世界のなかで步む人は
理由もなく世界のなかで步いてゐる人は
あれは私の方へ步みよつてゐる
今どこかで世界のなかで死ぬ人は
理由もなく世界のなかで死んで行く人は
あれは私の方を見いつてゐる
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