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2016/07/12

芥川龍之介 手帳2―28~31

《2-28》

男を飜弄して scandal を得ざる女=淫婦 その反對=愚婦(so called(淫婦))

妲己のお百より毒惡にして誰にでもよく思はれる女と contrast して書くべし 女の云ふ事を男の云ふ事より true をする世間

[やぶちゃん注:二つは同じ作品構想らしいが、これほどの真正悪女物、ちょっと読んでみたかった気がする。個人的には、その女の描き方に非常に興味があるからである。

「妲妃のお百」「だつきのおひやく(だっきのおひゃく)」と読む。生没年未詳。江戸後期に講談や実録物などで、御家騒動の謀略方の毒婦型ヒロインとして喧伝された女性。中国殷の紂(ちゅう)王の妃で病的な残忍性と淫蕩で知られる妲己(だっき)にちなんでかく呼ばれた。実際の「お百」は京都祇園の遊女の出とされ、たびたび主人や旦那を換え、奉公先の廻船問屋や歌舞伎役者と密通、吉原で花魁(おいらん)に出たところが、揚屋の主人の妻に納まるも、一転して秋田騒動の際に秋田藩家老那河(なか)忠左衛門(実録物では中川采女(うねめ))の囲い者として毒婦ぶりを発揮したといわれる。歌舞伎脚本に河竹黙阿弥作で慶応三(一八六七)年初演の「善悪両面児手柏(ぜんあくりょうめんこのでがしわ)」(通称「妲妃のお百」)があり、江戸末期から流行した毒婦物狂言の代表作の一つであった(以上は小学館「日本大百科全書」の稲垣史生氏の解説に拠った)。]

 

髮赤の女 lover を外の女にと lover を戀ふ その戀をすてる時髮黑くなる 木との結婚をする爲山へはいる

[やぶちゃん注:《2-26》の末尾に出た「春の彼岸に山へ入れば木と夫婦になつてしまふ。(出雲の神々)」の適応である。次も、その後の《2-29》、或いは《2-30》もその構想メモらしい。]

 

○聲 狐罠 ⑴長者の家 ⑵同庫 ⑶山の中

 

《2-29》

或女男に身を任かせず ごめんなさいと云ふ 後ちよいとした時にも同じ emphasis でごめんなさいと云ふ 男怒る

[やぶちゃん注:「emphasis」語勢。]

 

〇男

 ↑

 姊(髮赤)

 ↓

 妹

○姊 男を戀ふ 男 妹を戀ふ△ 姊 石神の婆にそそのかされ妹を木の妻とす(手段未考) 姊 又男を口説く 男却く 姊 婆より代れば妹を助くと云ふを聞く 代らんとす climax 姊の死

妹を木の妻とするまで 男に却けらるるまで(代る suggestion) 妹に代りて死するまで

[やぶちゃん注:「代る suggestion 」木の妻となる妹の身代わりとなる「提案」を姉がするのであろう。木と人の女の異類婚姻譚という妖しい民話風のものらしい。私などは大いに興味がそそられる。]

 

《2-30》

○⑴山:母父と姊 母父と男 男と妹 男と妹と姊 妹と姊 姊一人 姊と妖婆 姊と妹 姊一人 ⑵家:姊と妖婆 姊と母 姊と妖婆 姊と男 姊一人 ⑶妖婆

 

《2-31》

〇苦の世界 藏の中 悲しき夜 五十五階の建物 大野一家 哀れな男 流行性感冒と石

[やぶちゃん注:少なくとも「苦の世界」と「藏の中」は大正八(一九一九)年に芥川龍之介の盟友宇野浩二の発表した作品、「悲しき夜」は小説家でドイツ文学者の舟木重信(明治二六(一八九三)年~昭和五〇(一九七五)年)の大正八年『新小説』六月号に載った小説(芥川龍之介我鬼窟日錄附やぶちゃんマニアック注釈を必ず参照されたい)、最後の「流行性感冒と石」とは、かの志賀直哉の大正八年三月『白樺』初出の小説である(後に「流行性感冒」に改題)。そう考えると、中に挟まってある「五十五階の建物」「大野一家」「哀れな男」の三作も雑誌か何かで見出した気になった小説の題名なのではなかろうか? 識者の御教授を乞う。]

 

du temps que j'étais belle.

[やぶちゃん注:「私がきれだった時」。ルネサンス期フランスの詩人で「詩人たちの君主」(le prince des poètes)と讃えられたピエール・ド・ロンサール(Pierre de Ronsard 一五二四年~一五八五年)の詩Quand vous serez bien vieille(「あなたがひどく年をとってしまったなら」)の第一連末尾の引用と思われる。

   *

Quand vous serez bien vieille, au soir, à la chandelle,

Assise auprès du feu, dévidant et filant,

Direz, chantant mes vers, en vous émerveillant :

Ronsard me célébrait du temps que j’étais belle.

   *

冨樫剛氏のブログ「英語の詩を日本語で English Poetry in Japanese」のRonsasrd ("Quand vous serez bien vieille")にある(原詩も提示されてある)訳文によれば、第一連第四行は『「昔、ロンサールはわたしのこときれいっていってくれた」って。』である。]

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