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2016/08/11

グレン・グールド夢

グレン・グールド出演の、ギャラの高そうな、昨日の朝(2016年8月10日曙)の夢――

 

【アリア】

……僕は岡の上の高校にいる(僕が二校目に赴任した横浜の舞岡高校に酷似している、と「夢の中の僕」自身がその時に感じている)……

……僕は見知らぬ成人女性(「夢の中の僕」は「夢の中でありながら」、僕がこれらの条件で「見知らぬ女性」となると、深層心理上は実は僕が見知っている、ある昔の女生徒がモデルである可能性が高い、と感じている「夢の中の僕」を感じた)と二人きりで私たちは……グレン・グールドを待っている……

ここでグレンが演奏して呉れることになっているのである……

夏の夕暮れであった……

街燈が点く頃になっても、しかし、グレンは、来ないのであった……

しかし……夕闇の彼方の稜線から……幽かなピアノの曲が聴こえてくるのであった……
それはあの、彼の最後の「ゴルトベルグ変奏曲」のアリアであった…………

  

【第一変奏】

……その深夜……午前零時を回っている……僕はもう独りであった……

……同じ岡の上の高校の正面玄関前の軒下にグランド・ピアノが置かれてある……

――そこにグレンが――いた――

彼は近づいてゆく僕に気づくと、少し微笑んで――

あの鍵盤を摘み上げるような独特のポーズを以って――

「ある音」を――

「拾い上げ」――

僕に――

「投げた」――――

僕の毀れた脳の中に「聴き知らぬ」美しいメロディが沸騰した――

そうして――

彼は言った。

「君のため、だけに――弾きに来たんだ。」…………

 

【第二変奏】

……そこは見渡す限りの草原……
……高原の……そのまた高みにある……古い貯水場であった(それは四十年も前の大学一年の夏、一度だけ後輩の女子高生と登った、高岡の伏木にある古びたそれの酷似している、とまたしても「夢の中の僕」は感じていた)……

そこにグレンが――

寝ていた――

丈の延びた芝の中に――

グランド・ピアノが置かれていて――

そのピアノの前の愛用の椅子の脇に――

横向きになった黒いコートに身を包んだグレンが――

胎児のように――

眠っている――

その脇に、三頭の黒いスマートな犬が、グレンに頭を向け、「伏せ」の姿勢をして静かにしていた――

私はその犬たちを見ながら、呟いた。

「……ケルベロス……」

……画面はそのまま、それらの光景を俯瞰し出した……それを見ているらしい私(この第三幕のみが一人称視線で私には「私」が見えなかった)は、そのまま上空へとゆっくりと昇ってゆくのであった……

……グレンとピアノとケルベロスの周囲の草が、タルコフスキイの「鏡」冒頭のソロニーツィン演じる医師が草原で風に吹かれる不思議なシークエンスそっくりに靡くのが見えた……

……私はどんどん昇ってゆく……

……何かの音楽が聴こえる…………

また、蜩の声(ね)でここで目醒めた(最後の「音楽」は蜩のそれか)。
午前四時二十七分であった。
 

 
附言しておくと、この随所に特異的に分析家としての覚醒的な「私」が出来(しゅったい)するというのは、夢記述の永年の経験から言って、精神的にはあまりよろしくない状態であるとは言える。昨日書こうと思いながら、躊躇したのは、その箇所が気になったからである。しかし、ストーリー自体がすこぶる印象的であったので、今日、やはり、記しおきたくなったのである。

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