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2016/09/03

進化論講話 丘淺次郎 藪野直史附注 第五章 野生の動植物の變異(3) 二 鳥類の變異

     二 鳥類の變異

 

 鳥類は研究者の數も隨分多く、體の大さも通常寸法を測るのに丁度手頃(てごろ)であり、且從來鳥類を調べる人は標本を獲る每に身長、翼の長さ、嘴の長さ、足の長さ等を一疋づゝ詳しく測ることが、必要上習慣となつて居たので、變異に關する事實も自然他の動物に比すると餘程多く知れてある。

 雀でも鳥でもたゞ遠くから見て居ると、どの雀もどの鳥も全く同じやうで、互の間に少しも相違がないやうに思はれるが、親しく之を手に取つて比較して見ると、一疋として全く相同じきものがないのみならず、その間の相違は隨分著しいもので、身長・翼長等に一割半から二割或は二割半位までの差異のあることは殆ど常である。二割の相違といへば五尺と六尺との相違で、若し之が人間であつたならば一は雲突くやうな大男といはれ、一は徴兵にも取られぬ脊低(せびく)といはれる。人間ならば斯く著しく人の目に附く程の割合に相違して居ても、雀や烏であると一向人が知らずに居るのは、全く誰も之に注意せぬからである。無論こゝに述べたのは生長の終つたものばかりで、日々生長する幼鳥は除いての話である。鳥類の壽命は比較的甚だ長いが、人間と同じやうに一旦生長の終つた後は何年經ても身體に著しい增減はないから、以上述べた相違は一時的でなく、一生涯中の相違である。

[やぶちゃん注:「五尺と六尺との相違」一メートル五十一センチ五ミリと一メートル八十一センチ八ミリとの相違。]

 

Toriruiheni1

[鳥類の變異の表(一)]

[やぶちゃん注:以上の図は底本の国立国会図書館デジタルコレクションの画像からトリミングし、補正を加えたものである。グラフは上から「嘴長」、「翼長」、「尾長」の順である。]

 

 我が國にはまだ十分な取調がないから、鳥類の變異の有樣を詳しく示すには、外國産のものを例に取らねばならぬが、こゝに掲げた表はアメリカ産の雀に似た鳥の變異を現したものである。先づこの表の造り方から述べて見るに、初中央へ一本の縱線を引き、之を平均の長さを示す目標とし、次に一疋づゝ鳥の身長を測り、數十疋ある標本を殘らず測り終つた後、その平均の長さを計算し置き、更に再び一疋ゝを取つてその實際の長さと、先に計算によつて得た平均の長さとの差を測り、例へば三分だけ平均より短かければ縱線の左へ三分隔つた處に一つ黑點を附け、五分だけ平均より長ければ、縱線の右へ五分隔つた處に一つ黑點を附けるといふやうにし、斯くして身長の調が濟めば、次には同樣の方法で翼長を調べ、また次に尾長を調べて造つたものである。それ故、各段に於て黑點の數は鳥の頭數を示し、各黑點の位置は平均との差異の多少を現す。この表一つだけを見ても如何に野生の鳥類に、夥しい變異があるか、明に推察が出來るであらう。

 

Toriruiheni2

[鳥類の變異の表(二)]

[やぶちゃん注:以上の図は底本の国立国会図書館デジタルコレクションの画像からトリミングし、補正を加えたものである。グラフは上から「身長」、「翼長」、「尾長」、「嘴長」の順である。]

 

 尚一つこゝに掲げたのはアメリカ産の烏に似た鳥の變異の表である。前のと全く同じ方法で造つたもの故、別に説明にも及ばぬが、之には嘴の長さの變化が示してある。その他今日特別に鳥類の變異を調べて造つた表には、指の長さ、脚の長さ、眼の大きさ、羽毛の長短の順序などを丁寧に示したものが澤山にあるが、煩しいから、こゝには總べて略する。

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