譚海 卷之一 しいし取あつかひの事
しいし取あつかひの事
○しいし竹は時々湯へひでてつかふべし、竹むしばむ事なし、但し釜にて煮るはわろし、どうこの中へひたすが手まはし也とぞ。
[やぶちゃん注:「しいし竹」とは「しんし」で、「伸子」「籡」(国字)などと漢字表記する、布・反物を洗い張りしたり、染織したりする際、布幅を一定に保つために用いる道具(英語のテンプル(temple))で、形状は両端を尖らせたたり、又は、針を植えた細い竹棒(木製のものもある)である。左右両端にピンと張った布を固定し、布を縮ませずに幅を保たせるように支える器具である。ここにあるように「しいし」とも呼ぶ。細かくは参照したウィキの「伸子」を読まれたい。
「ひでて」「漬(ひ)でて」。漬(つ)けて。
「むしばむ」「蟲食む」或いは「蝕む」。虫に食われたり、腐ったり、ぐずぐずになったりする。
「どうこ」「銅壺(どうこ)」。銅や鋳鉄などで作った箱形の湯沸かし器を指すが、ここは前の釜が鉄製であるから、銅製のそれととるべきであろう。
「手まはし」「手囘し」。正しいやり方。]