譚海 卷之一 天文家世界彈丸の説の事
天文家世界彈丸の説の事
〇天文家の説に、世界は彈丸のごとし、吾邦にていへば、和蘭等の國は、足と足とを合居(あはせを)るやうに地下にさかしまに付(つき)てゐる國也。萬里海に航(こう)しくるは、彈丸の地を下より乘上(のりあぐ)る也。海上にはじめてをらんだ船みゆる時、此邦の地形と均しき所、平圓の所へ乘出(のりいで)たるときみゆる也。遠州海上已に日本の地見へざる所あり、帆柱にのぼればみゆるとぞ。是圓形の平地にならんとするすりはらひの所なれば也。
[やぶちゃん注:地球の大きさからみても、この話は実は都市伝説の類いだとずっと思っていたのであるが、個人ブログ「小人さんの妄想」の「丸い地球のマスト伝説」で物理的に考察されており、それによれば限定条件下(夜、遠い洋上にある大きな帆船のマスト上に灯した火を陸から観察する)に於いてなら昔でも、非常に視力のよい人間が、非常に精度の高い望遠鏡で見たならば、あり得ないこととは言えないとある。眼から鱗。
「彈丸」当時の鉄砲の弾のように球体であることを指す。
「すりはらひ」「摩拂」か。「摩る」は「物を他の物に接触させたまま力を入れて動かす・擦(こす)る」の意、「拂う」は「それまで居た場所をあける・引き払う」の意があるから、ここは球体のこちら側の球面と反転する反対側の半分の部分の接触面を指す語のように私には思われる。]

