今朝の夢
今朝の夢――
僕は母や二人の教え子(男性)とタイを訪れている(実際の私の亡き母は遂に外国に行ったことはなかった)。
僕と母はホテルの理容室で髪をカットして貰っている。
母が髪を洗いに部屋を出た。
僕をカットしていた青年はそこで仕上げに入って、私の頭を金色――あちらのあの派手な仏像のあのキンキンの色――に染め上げてしまう。
おまけに僕の顔にも褐色の強いファンデーションを万遍なく塗った。
髪を洗った母が戻ってくるが、僕を見ても私と気づかず、私をしきりに探している。正面の大きな鏡の中にある自分の顔を見ると、僕は髪を当たっていた現地の青年と同じ顔になっているのであった…………
僕は母とホテルの僕ら以外誰もいないレストランにいる(この時、母は別人になってしまった僕を「僕」として既に認識している)。他に客はいない。
そこに一緒に旅している二人の教え子が食事にやってきて、僕と母のいるテーブルに座るが、僕の顔を見て、怪訝そうな顔をする。
母は悪戯っぽく笑って、一緒のテーブルに座ったまま、黙っている。
「エゴイメ」
と僕は言う(ギリシャ語で「私だ」の意。テオ・アンゲロプロス監督の「シテール島への船出」の印象的な台詞である)。
しかし、二人の教え子は『何言ってんだ』という顔をして、がらんとしたレストランの中を見回しては――「僕」――を頻りに探している……母は……やっぱり黙っている……少女のような、悪戯っぽい笑みを浮かべて…………
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僕は実はこの夢の僕にとって極めて切実な意味を完全に解読出来た。
しかしそれは、これを読む諸君には退屈極まりない片々たる事実に過ぎない。従って謎解きは示さない。
しかし僕はこの夢を見ている最中にその解明を共時的に脳が行っていたことに気づいて、何か、ひどく不思議な気がした、とだけ言い添えておこう。
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僕は実はこの夢の僕にとって極めて切実な意味を完全に解読出来た。
しかしそれは、これを読む諸君には退屈極まりない片々たる事実に過ぎない。従って謎解きは示さない。
しかし僕はこの夢を見ている最中にその解明を共時的に脳が行っていたことに気づいて、何か、ひどく不思議な気がした、とだけ言い添えておこう。