夜がさみしい 尾形龜之助 (附 初出復元)
夜がさみしい
眠れないので夜が更ける
私は電燈をつけたまゝ仰向けになつて寢床に入つてゐる
電車の音が遠くから聞えてくると急に夜が糸のやうに細長くなつて
その端に電車がゆはへついてゐる
[やぶちゃん注:初出の昭和二(一九二七)年一月発行の『詩神』では、以下の通り。
*
夜がさみしい
眠れないので夜が更ける
私は電燈をつけたまま赤い毛布をかけた
仰向けになつて寢床に入つてゐる
電車の音が遠くから聞えてくると
急に夜が黑い糸のやうに細長くなつてその端を
電車がゆはへつけてゐるやうな氣がする
*
決定稿では状況の時制的順列性がぎりぎりまで圧縮され、その結果として、コーダの初出のだらんとした比喩が純粋なシュールレアリスティクな幻像に定着し、素晴らしい。
私は題名といい、コーダといい、つげ義春の漫画を直ちに想起する。]

