侏儒の歌 リルケ 茅野蕭々譯
侏儒の歌
リルケ 茅野蕭々譯
私の魂は恐(おそら)くは眞直で善良だ、
しかし私の心臟と、隱れてゐる血と、
私を痛ませる總ての物が、
魂を眞直に擔へない。
私の魂は、園もなく、寢床もなく、
私の鋭い骸骨に
恐しい羽搏きをして懸つてゐる。
私の兩手ももう何も成らない。
ご覽、何といふ慘さだ。
雨後の小さい蛙のやうに、
強靱に、濕つて、重く飛んでゐる。
その他私に著(つ)いてるものは、
ぼろぼろで、古くて、もの悲しい。
汚物の上に之等總べてのものを置くのを
どうして神樣が躊躇しよう。
不平さうな口をした私の顏を
神樣が怒つてはゐないかといふのか。
眞底では、明るく輝かしくならうと
屢〻用意はしてゐたが、
大きな犬ほど近く
顏のそばに來るものは何もなかつた。
そして犬はそんなものを持つてゐない。