八 リルケ 茅野蕭々譯 (「冠せられた夢」の「夢みる」詩群二十八章の中の第八章)
八
リルケ 茅野蕭々譯
あの上に漂ふことの出來る
あの雲が羨ましい。
日の當つた草原に
黑い影を投げたこと。
太陽を暗くするなんて、
なんて大膽に出來たらう。
地は光を欲しがつて、
雲の飛ぶ下で恨むでるのに。
あの太陽の金色の光の潮を
私も遮つてやりたいな。
一瞬間であらうとも。
雲よ、お前が羨ましい。
[やぶちゃん注:本詩篇は一八九六年刊のリルケの詩集「冠せられた夢」(茅野訳の標題。原題は“Traumgekrönt”)の「夢みる」詩群二十八章の中の第八章である。]
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