甲子夜話卷之三 20 木七、竹八、塀十郎
3-20 木七、竹八、塀十郎
木七竹入塀十郞と云諺ありとぞ。これは木は七月に伐り、竹は八月に截り、塀は十月に塗れば、久遠に耐るとの教なり。
■やぶちゃんの呟き
「木七、竹八、塀十郎」「きしち、たけはち、へいじふらう(へいじゅうろう)」。静山の述べているように、頻繁に採取される植物である木や竹の伐採及び塀を塗る最も適した時節を、人名に擬えて語調よく覚え易くした俚諺。言わずもがな、月は孰れも陰暦であるので注意されたい。木や竹は熱暑の夏から初秋頃にかけて生長の方を抑え始めるので、樹質が安定し、繁茂による伐採の難がやや楽になり、土や板塀はこの初冬の雨が少なく、空気もかなり乾燥した時期に塗ると、乾きが早いからであろう。但し、別に「木六竹八塀十郎」とも言うようである。
「と云諺あり」「といふことわざあり」。
「久遠に」「とはに」と訓じておく。
「耐る」「たゆる」。
「教」「おしへ」。