(この村に最後の家が立つてゐる。) リルケ 茅野蕭々譯
(この村に最後の家が立つてゐる。)
リルケ 茅野蕭々譯
この村に最後の家が立つてゐる。
地の果ての家のやうに寂しく。
小さい村が止めない街路は
靜に闇へ出てゆく。
この小村はただ二つの廣いものの
過渡だ。予知多く又氣づかはしく
小橋の代りに家々の傍を過ぎてゆく路。
かうして村を出る人々は長く彷徨ひ、
途上に死ぬものも多からう。
[やぶちゃん注:「止めない」は「とどめない」と訓じたい。「街路」を「小さい村」は「止」(とど)「めない」=「遮り遮断することをしない」のである。だからこそ、その「街路」は「靜」かに「闇へ」と向かって延び「出」(い)でて「ゆく」のである。]
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