若い彫刻家 リルケ 茅野蕭々譯
若い彫刻家
リルケ 茅野蕭々譯
私は羅馬に行かなくては。この町へは
年を經て名譽を擔つて歸つて來る。
泣くのではない。ねえ、戀人よ、
私は羅馬で傑作をつくるのだ。
さう云つて、彼は醉心地で
望むだ世界を步いて行つた。
しかし魂は屢〻心の中の
非難に耳を傾けるやうだつた。
いやな不安が彼を故郷へ返した。
彼は泣濡れた眼をして
棺の中の憐れな土色の戀人を彫むだ。
そしてそれが――それが彼の傑作だつた。
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若い彫刻家
リルケ 茅野蕭々譯
私は羅馬に行かなくては。この町へは
年を經て名譽を擔つて歸つて來る。
泣くのではない。ねえ、戀人よ、
私は羅馬で傑作をつくるのだ。
さう云つて、彼は醉心地で
望むだ世界を步いて行つた。
しかし魂は屢〻心の中の
非難に耳を傾けるやうだつた。
いやな不安が彼を故郷へ返した。
彼は泣濡れた眼をして
棺の中の憐れな土色の戀人を彫むだ。
そしてそれが――それが彼の傑作だつた。