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2016/12/31

石像の歌   リルケ 茅野蕭々譯

 

 石像の歌

           リルケ 茅野蕭々譯

 

誰だ。樂しい生命を捨てる程、

私を愛するのは誰だ。

若し一人が私の爲めに海で溺れると、

私は再び石から解かれて、

生命に、生命に歸るのだ。

 

私はそれ程鳴り繞(めぐ)る血にあこがれる。

石はほんたうに靜かだ。

私は生命を夢みる、生命は好ましい。

私をば蘇生させる

勇氣を誰も持たないか。

あらゆる最美なものを與へる

生命さへ私が得れば――

―― ―― ―― ―― ―― ―― ――

さうしたら私はひとり、

泣くだらう。石に焦れて泣くだらう。

葡萄酒のやうに熟すとも、私の血が何の役に立たう。

私を最も愛したその一人を

海から呼戻すことは出來ない。


 

[やぶちゃん注:底本校注によれば、二行目の「私を愛するのは誰だ。」は「リルケ詩抄」では「私を愛するは誰だ。」となっており、後の「リルケ詩集」でかく訂されてあるのを本文では反映した、とする。ここはそれに従った。]

 

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