祈りの後 リルケ 茅野蕭々譯
祈りの後
リルケ 茅野蕭々譯
しかし私は感じます、私は暖く、
いよいよ暖くなつてゆくのを、女王よ、――そして夕ゆふべに貧しく、
朝あさに疲れてゆくのを。
私は白い絹を裂き
私の臆病な夢は叫ぶ。
ああ、私にあなたの惱みをなやませて下さい。
ああ、私等二人を、
同じ不思議で傷つかして下さいと。
[やぶちゃん注:底本、即ち、「リルケ詩抄」では最終の、『不思議で傷かして』であるが、校注によれば、後の「リルケ詩集」では、ここは『神祕で傷つかして』と訳が変更されているとある。『傷かして』は現在では読みにすこぶる躓いてしまうと判断し、恣意的に「つ」を補った。
「夕ゆふべに」は次行の「朝あさに」、「あさあさに」(「朝の来る毎に」の意)との対表現で、「ゆふべゆふべに」と読み、「毎日の夕べに」の意であろう。これは先に紹介した後の「孤獨」の訳詩でも用いられている表記法である。]

