女等が詩人に與へる歌 リルケ 茅野蕭々譯
女等が詩人に與へる歌
リルケ 茅野蕭々譯
すべてが開かれるのを御覽なさい。私だちもさうです。
私たちはさうした祝福に外ならない。
獸の中で血と闇とであつたものは
私たちの中で魂に育つた。そして
更に魂として叫んでゐる。あなたへも。
あなたは勿論それを風景のやうに
眼に入れるだけだ。軟かく、慾望もなく。
それ故私たちは思ふ、あなたは
呼ばれる人ではないと。しかしあなたは
私たちが殘りなく全く身を捧げる人ではないのか。
誰かの中で私たちはより多くなれませうか。
私たちと一緒に無限なものは過ぎ去る。
あなたはゐて下さい。口よ。私たちが聞く爲に。
あなたはゐて下さい。私たちに話す人よ、あなたはゐて下さい。