甲子夜話卷之三 19 樅板物音を阻る事
3―19 樅板物音を阻る事
奧州の人の云に、樅の板は人語をよく通さぬものなり。家居を板羽目にするか、又間より間を隔つる板戸に樅を用ゆれば、近き人語も徹せざるものなりと。此事聞たるまゝにて未だ試みずと、述齋語れり。
■やぶちゃんの呟き
「樅板」「もみいた」。裸子植物門マツ亜門マツ綱マツ亜綱マツ目マツ科モミ属モミ Abies firma から製材した建築材。「爽建ハウス株式会社」公式サイト内の「天然モミの木の内装材」に、『植物塗装仕上げのモミの木の床や壁は光の反射量が適当で瞳孔の開きが一定し、ストレスを感じません』。『また、現代の家は気密性が高く音が反響しやすくなっています。これが小さなお子さんに無意識のうちにストレスを与え、イライラしやすくなるなどの悪影響を及ぼします。モミの木の板は音を吸収するため室内の音が反響しませんので、ストレスなく大音量でオーディオを流したり楽器を演奏したりできます』とある。
「阻る」「さえぎる」と訓じておく。
「云に」「いふに」。
「家居」「いへゐ」。
「間」「ま」。部屋。
「徹せざる」「とほせざる」
「聞たる」「ききたる」。
「述齋」お馴染みの盟友林述斎。