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2016/12/27

盲ひつつある女   リルケ 茅野蕭々譯

 

 盲ひつつある女

           リルケ 茅野蕭々譯

 

その女(ひと)は他の人々のやうにお茶に坐つてゐた。

私には何だか其女が茶椀を

他人とは少し違つて持つやうに思へた。

一度ほほ笑むだ。痛ましい程に。

 

終に人々が立上つて話をし、

偶然ではあつたが、徐ろに多くの部屋を

通つて行つた時、(人々は話した、笑つた、)

私はその女を見た。その女は他の人々の後をついて來た。

 

直ぐ歌はなくてはならない人のやうに、

しかも、大勢の前で、控目に、

喜んでゐるその明るい眼の上には、

池の面へのやうに外からの光があつた。

 

その女は靜に從(つい)て來た。長くかかつた。

何かをなほ越さなかつたやうに、

しかし、越した後は、もう

步かずに飛翔するだらうと思ふやうに。



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