小穴隆一「二つの繪」(32) 「影照」(7) 「紙屋のおかみさん」
紙屋のおかみさん
「夏目さんはあの紙屋のおかみさんが好きだつたんだ、」と、芥川と牛込を步いてゐたときであるが、芥川はちよつと右肩と顎で僕に教へた。
僕は紙屋のおかみさんが夏目さんに畫を勉強させたのかなと、步きながら考へた。
[やぶちゃん注:夏目漱石(慶応三(一八六七)年~大正五(一九一六)年)の没した屋敷(借家)は早稲田南町であるが、彼は江戸の牛込馬場下(現在の新宿区喜久井町)が出生地である。
「紙屋のおかみさん」不詳。識者の御教授を乞う。]
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