小穴隆一「鯨のお詣り」(84)「偶興」
[やぶちゃん注:以下、小穴隆一「鯨のお詣り」の詩篇パート。散文では散々読者を苦しめる小穴隆一であるが、詩篇では俄然、その朦朧体が優れたサンボリスムを醸し出すことが判る。孰れも、いい。]
偶興
あしのゆびきりてとられしそのときは
すでにひとのかたちをうしなへる
あしのくびきりてとられしそのときは
すでにつるのすがたとなりにけむ
あしのくびきりてとられしそのときゆ
わがみのすがたつるとなり
かげをばひきてとびてゆく
[やぶちゃん注:この詩篇の本文自体(標題「隅興」は無し)は既に「游心帳」で掲げてはいる。]
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