小穴隆一「鯨のお詣り」(92)「一游亭句集」(4)「田端」 /「鯨のお詣り」本文~了
田端
からたちの芽やいつしかにつくし草
からたちは玉(たま)となるかや梅雨ぐもり
一昔たちて大阪に人を訪ぬ
白壁(しらかべ)はまぼし小皿(こざら)のわらびもち
食(を)すも旅わらびもちなとひるさがり
靑梅にて二句
壜の中の皆二匹づゝなれば、どれが
雌か雄かと言ひ、雌を容れておいては
鳴かぬと言ひ切らる。
おぞましく事(こと)たづねたり河鹿(かじか)どの
旅立つや雨にぬれたる草ばうき
今年の丈(たけ)のびきりつ葉鷄頭(はげいとう)
雨の夜將棋盤を購ふ
これはこれ獨り稽古の將棋盤
[やぶちゃん注:私は将棋の「金」「銀」の駒の動かし方も知らぬ輩であるが、恐らくは湿気を嫌う将棋板を雨の夜に買うというシチュエーションに既にして句の翳りがセットされているのではあろう。]
山獨活(やまうど)を食(た)ぶる冥利の淸水(しみづ)哉
東海道
ひがん花(ばな)富士はかうべに晝の月
三千院、寂光院へまゐる
ひがん花殘りてぞあれ大原(おほはら)や
白萩(しらはぎ)や目に須磨寺(すまでら)の昔かな
昭和二年
[やぶちゃん注:クレジットは底本では二字上げ下インデントでポイント落ち。以上の以って「後記」を除いた「鯨のお詣り」の本文は終わっている。]
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