小穴隆一「鯨のお詣り」(63)「子供」(2)「とんもろこし」
とんもろこし
母は函館で死んだ。それで一時、私達、二人の姉と一人の弟と私、四人の孫が信州のおぢいさんの家に預けられた。私は鄰の日野家(ひのや)のうし公(こう)から小便で泥饅頭(どろまんぢう)をつくることを教(をそ)はつた。土をよせあつめてそこを肱(ひぢ)でちよいちよいと凹(へこ)ませて、小便を少しづつたらせばいくつかの饅頭が出来る愉快な遊び、あれである。
私が日野家からどれだけのとんもろこしを貰つたものか見當もつかないでゐる。しんばかりになつたのを持つてゆくとまた實(み)のついたのが貰へたから。
日野家には牛がいくつかゐて、私が食べたあとのしんをみんな引受けてくれてゐたのである。
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