病める者へ贈物としての詩 山村暮鳥
病める者へ贈物としての詩
林檎より美しいもの
かすてらより柔いもの
此の愛をそなたにおくるのだ
此の愛を
雪のやうな此の愛
落葉(おちば)のやうにはらはらと
そなたの上に飜へる
そなたはそれをどうみるか
風の中なる私の愛を……
何といふ冷い手だ
何といふさみしい目だ
おお病める者
そなたのためには純白な雪
そして火のやうな私だ
この愛の中で穀物の種子(たね)のやうな強き生(いのち)をとりかへせ
光りを感じ
しづかに生き
[やぶちゃん注:太字「かすてら」は原典では傍点「ヽ」。]