人間に與へる詩 山村暮鳥
人間に與へる詩
そこに太い根がある
これをわすれてゐるからいけないのだ
腕(うで)のやうな枝をひつ裂き
葉つぱをふきちらし
頑丈な樹幹(みき)をへし曲げるやうな大風の時ですら
まつ暗な地べたの下で
ぐつと踏張(ふんば)つてゐる根があると思へば何でもないのだ
それでいいのだ
そこに此の壯麗がある
樹木をみろ
大木(たいぼく)をみろ
このどつしりとしたところはどうだ
[やぶちゃん注:二行目「腕(うで)のやうな枝をひつ裂き」は彌生書房版全詩集も加工データとして使用した「青空文庫」版(底本・昭和四一(一九六六)年講談社刊「日本現代文學全集 54 千家元麿・山村暮鳥・佐藤惣之助・福士幸次郎・堀口大學集」)も孰れも「腕(うで)のやうな枝をひき裂き」と《訂されて》あるが、従えない。]