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2017/03/15

航海の前夜第四篇 月夜   山村暮鳥

 

  月夜

 

おもひ惱む逍遙の砂の上、

踏みておぼえる蹠の疊のほとぼり。

 

あ、あ、接吻(キツス)に頰と頰のよる時、

眼を閉てひろびろとはてなき

海上を見給へ。

汐の囁めき――。あかき灯――。

いま此の情緒を柔らげる、

喘息(あへぎ)、

悲哀(かなしみ)、

白き肌と淫唄(ざれうた)は、

 

さながら忘れ殘したる物語より。

歡樂に抱かれ眠るふところより

靑い瞳の微笑む如く、……

 

月夜となれば我が心、――(花にほふ窓に)

 

やつれた女の顏のみゑがき歡ぶ。

 

[やぶちゃん注:「航海の前夜」五篇の第四篇。「踏みて」の「踏」及び「灯」は底本のママとした。前者は私自身が「蹈」という字形を生理的に好まぬというプライベートな理由卯から、「灯」はしばしば作家によって「燈」と区別して用いられることがあるからである。前者は悪しからず。

「蹠」は私は何故か「あうら」と反射的に読んでしまうが、一般的ではないので、「あしうら」と暫くは読んでおく。]

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